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zoom RSS 「さよなら妖精」について 〜あるいはマーヤのこと〜(その2)

<<   作成日時 : 2005/04/11 16:39   >>

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注意:このエントリには「さよなら妖精」についてのネタバレ情報が多数含まれており、これから読もうとしている、あるいはいま現在読書中の方が読まれた場合、著しく興を削ぐ可能性があります。そうならぬよう、ただちにこのエントリを閉じていただければと思います。

(前のエントリからの続き)

話を元に戻す。「この小説は/この小説に書かれたものは何だったのか」というより根元的な疑問についてだ。
風変わりなミステリ、という読者もいるだろう。青春小説、という方も多いようだ。人それぞれだ。だがこれがミステリや青春小説なのだとしたら、なぜあのような結末が描かれなければならなかったのか。初読後、打ちのめされた自分の頭の中では「ショック小説」という言葉がぐるぐると回り、先に書いた知人も同じ言葉を使っていた。だがこれが「ショックを与えることを(主)目的とした小説」かとなると、やはり違う。それは違うだろう。

ところで、小説の途中で主人公が退場してしまうことはまずない。主要登場人物のほとんどもまたしかり。物語の要請を受けるまで(その要請が透けて見えるか否かは小説家の腕次第。以上余談)、彼らは主人公と同じ舞台の上に立ち続ける。
かつて読んだあるライトノベルでは、物凄い数の人々が命を落としていく中、主人公とその周りの人間たちだけはことごとくラストまで生き残った。その書きように嫌気がさして続刊は読まなかった。命を落とした人たちは主人公たちとくらべてたいした人間じゃなかったとでも?馬鹿言うな。

そのような物語の構造についての説明としては、「主人公たちが生き残った」のではなく「生き残った者たちが主人公となった」のだ、という説明が最も誠実かもしれない。だからむろん、「生き残らなかった者たち」の物語も、物語としては書きにくいから書かれないだけで無数に存在する。
そしてそれは、現実世界でも同様だ。現実世界では、その人がどんな人かに関係なく、物語的な前振りもなにもなく、死は不意に無造作に訪れる。それはいまさら例を探すまでもなく、「さよなら妖精」の遠い舞台となった旧ユーゴスラビアで、クロアチアやボスニア・ヘルツェゴヴィナやコソヴォで、現実に起きたことだ。生き残るに値しなかったから生き残らなかった、という見方には、自分はこの世の終わりが来るまで与するつもりはない。

だから、と思う。むろん主人公・守屋路行の体験と思いと行動も「さよなら妖精」のテーマのひとつだろう。太刀洗万智、白河いずる、文原竹彦といった他の登場人物たちも個性的で魅力的だ。だから「青春小説」もありだろう。
だが、自分がこの小説から受け取る最も大事なものは、「マーヤのこと」だ。マーヤについて書かれた最初の出来事から、最後の出来事まで。だから自分にとって、「さよなら妖精」は青春小説でもミステリでもない。マーヤと、「マーヤのこと」が書かれた小説。そうでないといけない、という責務のようなものさえ感じている。



それと。
おれは現実とフィクションの区別がついていない困った人間だ。おそらく自分で絵本を読むようになったはるか昔から今に至るまでに、絵本やジュブナイルや小説や漫画や映画やアニメやゲームやその他数え切れないほどの物語で見知った、忘れがたく大事な者たちがたくさんいる。現実世界の知人や直接面識のない著名人の一部が大事な存在であるのと同じように、彼ら彼女らも大事な存在だ。
だからおれは、マーヤのことは忘れない。ずっと忘れない。作者の名前も小説の名前も主人公の名前ももしかしたらマーヤという名前すらいつか忘れるかもしれないけど、そこに聡明でユーモラスで快活でつよい少女がいたことは、たぶん物語に興味を失う日が来るまで覚えている。そうしていようと思う。

「んー。哲学的理由がありますか?」

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